エンジンオイルを交換・購入する際に、困ることはありませんか?
- 種類が多くて難しい
- どのオイルを選べば良いかわからない
- 規格やグレードがいまいちわからない
本記事では、エンジンオイルのグレードについて表記の見方や規格別の特徴を詳しく解説します。
エンジンオイルの種類を知って車に合ったエンジンオイルのグレードを選ぶことは、性能の向上やエンジンの摩耗を抑えることにもつながります。
どれを選んで良いのか悩んでしまう方や、そもそもエンジンオイルのグレードが何かわからないという方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
- エンジンオイルの規格やグレードがわかる
- 表記の見方や表示一覧がわかる
そもそもエンジンオイルの規格とは?
そもそも「エンジンオイルの規格とは?」と思う方も多いのではないでしょうか。
エンジンオイルの規格とはグレードとも呼ばれており、そのエンジンオイルがどのような性能でどのような車に合っているかを判断するための指針のことです。
エンジンオイルのグレードが高くなればなるほど性能が良くなるのはもちろんですが、その分価格も高くなります。
また、グレードの高いエンジンオイルはメリットも多いことが特徴です。
- 省燃費性能UP
- エンジンへの抵抗抑制
- 耐久性UP
ただし、ただ単に最良グレードのエンジンオイルだから特別に品質が良いというわけではなく、自車にあったエンジンオイルでなければ効果を発揮できません。
オイルの規格は車種ごとに指定されているので、きちんと自分の車にあったエンジンオイルのグレードを選ぶことが重要です。
エンジンオイルの主な規格4種類
本章では、エンジンオイルの主な規格を4種類紹介します。
主な規格は下記の4つです。
- API規格
- ILSAC規格
- SAE規格
- JASO規格
それぞれ解説します。
API(アメリカ石油協会)規格
API規格は、3つの協会が定めた規格の1つです。
- 米国石油協会(API)
- アメリカ材料試験協会(ASTM)
- アメリカ自動車技術者協会(SAE)
省燃費性・耐熱性・耐摩耗性などの性能をアルファベットで設定しています。
例えば「SA」「SB」や「CA」「CB」のように表記され、後ろのアルファベットが進むほど性能が高いことを表しています。
また、API規格は「 EOLCS(エンジンオイル認証システム)」によって認定されているため、認証品にはAPIシンボルマークが記載されます。
ILSAC(国際潤滑油規格諮問委員会)規格
ILSAC規格は、日米の自動車メーカー組織ILSAC(自動車工業会)が制定したガソリンエンジン用のオイル規格です。
また、ILSAC規格はAPI規格と同じでEOLCSによって認定されているため、認証品にはスターバーストマークが記載されます。
規格表示は「GF」のあとに1~5の数字がつき、数字が大きいほど最新のグレードを表しています。
JASO(日本自動車規格)規格
JASO規格は、JASO(日本自動車規格)が制定した規格の1つです。
規格表示は「DL」や「DH」が頭文字で、そのあとに数字をつけて表示されます。
環境に優しく高温酸化防止性が強いため、燃焼効率を考えて選ぶ場合におすすめのオイルです。
SAE(アメリカ自動車技術者協会)規格
SAE規格は、自動車技術者協会(SAE International)が発行する工業規格で、特にオイルの粘度分類に基づいた粘度表記を示す規格です。
アメリカでは、米国国家規格協会(ANSI)にもSAE規格が多数採用されています。
エンジンオイル規格別の特徴について
本章では、それぞれの規格の特徴や表示を紹介します。
紹介する順番は下記のとおりです。
- API規格のガソリンエンジンオイル
- API規格のディーゼルエンジンオイル
- ILSAC規格のガソリンエンジンオイル
- JASO規格のディーゼルエンジンオイル
- SAE規格の粘度表示
それでは、順番に解説します。
API規格 ガソリンエンジンオイルの特徴
本章では、12個のAPI規格表示とその特徴を解説します。
数が多いので、ざっくりとエンジンオイルの特徴を見てみましょう。
SA | 添加油が不要な軽めの運転条件エンジンに使われています。しかし、現在の自動車エンジンには不適です。 また「ベースオイル」とも呼ばれており、添加物は含まれていません。 |
SB | 最低レベルの添加物を使ってるのが特徴のオイルです。 かじりの防止性や腐食防止性、酸化安定性などが備わっています。 |
SC | 1964~1967年型の乗用車やトラックに使われるオイルです。 デポジット防止性や摩耗防止性、サビ止め、腐食防止性を備えているのが特徴です。 |
SD | 1968~1971年型のブローバイガス還元装置が付いた乗用車・トラックに使用われます。 全体的にはSCより高性能的に進化したオイルです。 |
SE | 1972~1979年型の乗用車・トラックに使用われるオイル。 SDより酸化とサビ、腐食などの防止性が高性能になったタイプです。 |
SF | 1980年型以降の乗用車とトラックに使用されます。 酸化安定性とバルブ機構の摩耗防止性が向上しています。 |
SG | 1989年型以降に作られたガソリン車に対応しています。 エンジンの長寿命化やSF以上の性能を持っており、耐スラッジ性が向上しているのが特徴です。 |
SH | 1993年型以降に製造されたガソリン車に対応しているオイルです。 低オイル消費、省燃焼性、低温始動性などが向上しています。 |
SJ | 1996年型以降のガソリン車に対応しているオイル。 せん断安定性がSHより向上してるのが特徴です。 |
SL | 2001年型以降のガソリンエンジンに対応。 オイルの耐久性、酸化安定性が向上しています。また省燃費性が高まりCO2の削減など環境保護も強化されたオイルです。 |
SM | 2004年に制定された規格です。 SL規格より省燃費性が向上し、有害排気ガスが低減しています。浄化性や耐熱性、耐摩耗性にも優れる点がポイント。 |
SN | 2010年に制定された規格です。 SM規格より省燃費性能が持続し、触媒保護性能が強化されました。また、低温流動性が向上し酸化にも強いメリットがあります。 |
SP | 2020年5月に制定された新規格。 省燃費性を含む総合性能が向上し、最新のエンジン機構へ適応したオイルになっています。 |
API規格 ディーゼルエンジンオイルの特徴
本章では、API規格のディーゼルエンジンオイルの特徴を紹介します。
それでは見ていきましょう。
CA | 使用負荷が軽度のディーゼルエンジンとガソリンエンジンに使用できるオイル。 軸受の腐食防止性と高温デポジット防止性が特徴です。 |
CB | 軽~中度のディーゼルエンジンオイルに使われるオイルです。 耐摩耗性とデポジット防止性に優れています。 |
CC | 高負荷運転の過給機付きディーゼルエンジン、および高負荷ガソリンエンジンに使われます。 高温デポジット防止性やさび止め性、腐食防止性などが備わっています。 |
CD | 高速高出力で運転されるディーゼルエンジンに使用されるオイルです。 高耐摩耗性とデポジット防止性が特徴で、ほかにも軸受腐食防止性も優れています。 |
CF | 建設用機械や農業用機械など、高速回転が不要なディーゼルエンジンに使われます。 CD規格に代わるものとして各性能がアップしたタイプです。 |
CF-4 | 大型トラックなどの過酷な条件で運転されるディーゼルエンジンに使われます。 CE規格よりもスラッジ分散性などが向上している点が特徴です。 |
ILSAC規格 ガソリンエンジンオイルの特徴
本章では、ILSAC規格のガソリンエンジンオイルの特徴を説明します。
それでは見ていきましょう。
GF-1 | API規格のSH(1993年型以降製造のガソリン車対応。低オイル消費・省燃焼性・低温始動性)とほぼ同じ性能のオイルです。ほかには、スラッジ防止性が向上してる点もポイントです。 |
GF-2 | API規格のSJ(1996年型以降のガソリン車対応。せん断安定性がSHより向上)とほぼ同じ性能のオイルです。GF-1より、SJと同じようにせん断安定性が高くなっています。 |
GF-3 | API規格のSL(2001年型以降のガソリンエンジン対応)と同じグレードのオイルです。 省燃費性の向上や排ガス浄化性能などがGF-2よりも良くなってる点が特徴です。 |
GF-4 | API規格のSM(2004年に制定された規格)と同じ性能のオイルです。 GF-3と比べて耐熱性・耐摩耗性が良くなっています。 |
GF-5 | API規格のSN(2010年に制定された規格)とほぼ同性能のオイル。 省燃費性能の持続性がGF-4より強化されたバージョンです。 |
GF-6 | 省燃費性や総合性能が各段にアップした最新のエンジン機構に適応したオイルです。 |
JASO規格 ディーゼルエンジンオイルの特徴
本章では、JASO規格のディーゼルエンジンオイルの特徴を解説します。
主に2つの規格があります。
DL-1 | 乗用車のクリーンディーゼルエンジンに対応しているグレード。 動弁系部品の摩耗防止やススの清浄性確保、高温下で使う場合の酸化安定性が良いのが特徴。 |
DH-2 | 大型トラックやバスなどのディーゼルエンジンに使われるグレード。 DPF(ディーゼルエンジンの排気ガス中の粒子状物質を軽減させるフィルター)の目詰まりを減らせるのが特徴。 |
DH-2F | DH-2の規格値に省燃費性が加わったグレード。 |
SAE規格 粘度表示
本章では、SAE規格の粘度表示について解説します。
上の画像のとおり、低温粘度を表す「〇W」が小さい数字ほど粘度が低いことを表しています。
低温粘度が低ければ低いほど、やわらかいオイルで動き出すときの始動性が良いのが特徴。
そのため、寒冷エリアに住んでいる人なら、低温粘度0~5Wなどの低い数字が合っています。
粘度が低い≪低温粘度≫粘度が高い | |||||
0W | 5W | 10W | 15W | 20W | 25W |
次に、高温粘度の表示を紹介します。
高温時は、数字が大きいほど温度が高くても硬さを維持できる強いオイルといえます。
そのため、長距離移動をする方は高温時の粘度が高いオイルを選ぶのがよいでしょう。
粘度が低い≪高温粘度≫粘度が高い | |||||
20 | 30 | 40 | 50 | 60 |
まとめ
エンジンオイルにはさまざまな規格があり、それぞれ複数のグレードに分けられています。
そのため、表示の仕方や使える車種、特徴も違うため注意してみましょう。
そして最も重要な点は、ただ単に「グレードが高いエンジンオイルを選べば良い」わけではありません。
車種ごとに相性の良いオイルがあるため、合うオイルでなければオイル自体の効果を最大限に発揮できないのです。
特徴を知ったうえで、自分の車に合ったエンジンオイルのグレードを選ぶようにしましょう。