ベースオイルの5つのグループとは|成分や製造法、役割を徹底解説

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ベースオイルは、エンジンオイルの主成分となるオイルです。

ベースオイルはエンジンオイル全体の80〜90%を占めるため、ベースオイルの性能がエンジンオイルの性能に大きく影響します。

本記事では、ベースオイルの種類や成分、製造法まで紐解き、違いについて解説します。

目次

ベースオイルとは?

ベースオイルとは、エンジンオイルを構成しているベース(基油)となるオイルのことを指します。

エンジンオイルを構成しているのは約8割がベースオイルで、ほかの約2割が添加剤や防錆剤などのオイルを安定させる物質が配合されています。

80%:ベースオイル
20%:添加剤や防錆剤

エンジンオイルはベースとなる「ベースオイル」に「添加剤」を配合して作られます。

つまり、エンジンオイルの性能差はこのベースオイルの違いによって決まるのです。

そして、ベースオイルにもそれぞれ規格やグレードが存在します。

大きく分けるとグループⅠ~グループⅤまでの5種類があり、API(アメリカ石油協会:American Petroleum Institute)が定めた基準を採用しています。

添加剤は少ない方がいいのか?

一般的にはベースオイルに比べて、添加剤は耐久性が低く劣化しやすいといわれています。

そのため、エンジンオイルの性能を添加剤に頼っているオイルは性能の低下が早い傾向にあります。

一方で、質の良いベースオイルを使用すれば添加剤の量を抑えることができるため、長期間性能を維持することが可能です。

しかし、添加剤が多いからといって一概に「悪いオイル」とはいいきれません

それぞれの特性や製造工程、種類によってもさまざまです。

ベースオイルの5つのグループ

本章では、ベースオイルの5グループを解説します。

5つのグループは、石油や関連する製品の標準規格を制定する組織であるAPIが下記のように分類しています。

表にすると下記のようになります。

API規格特徴
グループ硫黄分(%)飽和分(%)粘度指数製造法分類
0.03 ~ 9080 ~ 120溶剤精製鉱油系
~ 0.0390 ~水素化精製
120 ~水素化精製
ポリαオレフィン(PAOs)合成系
グループⅠ~Ⅳ以外

それぞれ見ていきましょう。

グループⅠ

グループⅠは、最も伝統的な製法で抽出されるベースオイルです。

不純物が多く酸化劣化しやすいですが、粘度が高くアニリン点が低いため添加剤を多く処方するベースオイルでは重宝されています。

アニリン点:油脂の溶ける性質を示す数字のこと

また、グループⅠの基準に満たないオイルは規格オイルとして採用されません。

しかし生産規模は大きいものの、工場の老朽化や省燃費化の流れで工場の閉鎖が後を絶たず、グループⅡやⅢのオイルに比べて近年は縮小傾向にあります。

表示は「150SN」などで表され、100℉SUS粘度の前後に「SN(ソルベントニュートラル)」で表記されます。

表現鉱物油・ミネラル
分類
種類鉱物油
原油の処理方法溶剤精製
硫黄分(mass%)0.03超
飽和成分(vol%)90未満
粘度指数80~119

ちなみに製造過程では、溶剤抽出時にエキストラクトを、溶剤脱ろう時にスラックワックスを副産物的に得ることも可能です。

エキストラクト:抽出液
スラックワックス:パラフィンワックスの製造に使用される主要原料(ろうそく・化粧品・絶縁体など)

グループⅡ

グループⅠのベースオイルを更に精製した鉱物油で、酸化劣化を促進させる不純物が少ないのが特徴です

水素化分解(精製):減圧軽油(VGO)を高温・高圧で触媒である水素と接触させて不純物を除去する方法

純度が高く基本的に無色透明です。

特に北米やアジアなど、世界各国に多くの工場が存在しており世界的に最もメジャーなべースオイルの1つ。

しかし、生産量はグループⅠと比較して少なく、同じ鉱物油カテゴリーで販売されているので見分けがつきにくいかもしれません。

表現鉱物油系・部分合成・高度精製鉱物油ミネラル
分類鉱物油・部分合成油
種類鉱物油
原油の処理方法水素化分解(精製)
硫黄分(mass%)0.03以下
飽和成分(vol%)90以上
粘度指数80~119

グループⅠとⅡを見分けるには「高度精製鉱物油」の記載があればグループⅡをベースにしている商品ですので、そちらで見分けてみてください。

グループⅢ

グループⅢのベースオイルは、鉱物油にも関わらず「合成油」表記が許可されているオイルです。

その理由は、精製技術の向上で性能が化学合成油に匹敵することが認められたためと、過去アメリカでの係争の結果として認められています。

そのため、どちらの表現を使うかはメーカー判断になり2種類の表記が混在している状況です。

どちらかといえば「合成油」表記が多いかも。

表現合成エンジンオイル・合成油シンセティック
分類高度精製油(VHVI)
種類鉱物油
原油の処理方法水素化分解(精製)
硫黄分(mass%)0.03以下
飽和成分(vol%)90以上
粘度指数120以上

製造方法は2種類あり、石油精製方法と高分子合成法があります。

石油精製方法:グループⅡを更に精製する方法
高分子合成法:化学的に小さな分子を集めて合成する方法

ちなみに、分類の「高度精製油(VHVI)」は、とても粘度が高いことを意味しており粘度指数が120以上あることからこのように表現されています。

グループⅣ

グループⅣは「ポリαオレフィン」という物質が元になったベースオイルです。

潤滑性能は劣る(添加剤でカバー可能範囲)が、酸化劣化しにくく粘度指数が高いのにも関わらず低温流動性に優れていることが特徴です。

また、添加剤の効果を邪魔しないため、とても扱いやすいオイルといえます。

表現合成エンジンオイル・化学合成油
分類化学合成油(PAO)
種類PAO・ポリαオレフィン
原油の処理方法化学合成
硫黄分(mass%)
飽和成分(vol%)
粘度指数

製造法は、化学合成で最終的に水素化して精製しています。

化学プラントで製造される純粋な化学合成ベースオイルです。

LAO(エチレンの二重結合物質)を酸性触媒(素早く効率よく酸化させること)で物質をくっ付けあわせてオリゴマー化(結合)した混合物を、水素化して精製します。

グループⅤ

グループⅤは、Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ以外のベースオイルの総称です。

グループⅤは「エステル(元は植物油のひまし油の意味)」と思われがちですが、まったく違いますので整理しておきましょう。

例えば、Ⅰ~Ⅳに含まれないベースオイルは下記のとおりです。

  • 脂肪酸エステル
  • ポリアルキレングリコール(PAG)
  • アルキルベンゼン
  • リン酸エステル
  • シリコーン油
  • PIB(ポリブテン)
  • ナフテン油
  • 植物油など

これらも、分類的には「グループⅤ」になります。

表現合成エンジンオイル・化学合成油
分類化学合成油(エステル)
種類Ⅰ~Ⅳ以外のベースオイル
原油の処理方法化学合成
硫黄分(mass%)
飽和成分(vol%)
粘度指数

グループⅤで広く認知されているエステルは、PAOと比較しても優秀なベースオイルです。

また、現在は植物油エステルよりも合成エステルが主に使用されています。

モノエステル、ジエステル、ポリオールエステル、コンプレックスエステルなど

合成エステルには上記の4種類があり、モノエステル≪コンプレックスエステルの昇順に性能が良く、高価格です。

ベースオイルの主な3種類

本章では、主なベースオイルを3種類紹介します。

  • 鉱物油
  • 部分合成油
  • 化学合成油

それぞれ解説します。

鉱物油

グループⅠ・Ⅲを主原料としたベースオイルです

コストパフォーマンスが最も良く、一般的にも広く普及しています。

ただし、ほかのベースオイルに比べると不純物が多いため、耐熱性能や酸化に弱く劣化が早いのがデメリットです。

こんな方にオススメ
  • コスパを重視したい方
  • 化学合成油が使えない車種の方

部分合成油

グループⅡ・Ⅲ混合か、Ⅲを主にしたベースオイルです

化学合成油と鉱物油を合わせたハイブリッド型のオイルで、お互いのデメリットを補うように作られています。

そのため、さまざまなタイプの車にオールマイティに対応可能です。

こんな方にオススメ
  • 質もコスパも重視したい方
  • どのような車種にも対応したい方

化学合成油

グループⅢ以上を主としたベースオイルです

酸化安定性や低温からの流動性に優れた高性能なオイルで、ターボエンジンを搭載している車やスポーツ車など大切に使いたい方に最適のオイルです。

ただし、高性能・高品質のため高価格なことが1点デメリットでしょう。

こんな方にオススメ
  • 愛車を長く乗りたい方
  • スポーツカー、アメ車に乗っている方

ベースオイルの主な添加剤6つ

ベースオイルには、さまざまな添加剤が含まれています。

本章では、主に使われる添加剤を6つ紹介します。

  • 粘度指数向上剤(ポリマー)
  • 摩擦調整剤(FM剤)
  • 流動点降下剤
  • 消泡剤
  • 清浄分散剤
  • 防錆剤

それぞれ、簡単に解説します。

粘度指数向上剤(ポリマー)

ベースオイルが温度によって変化する粘度の度合い(粘度指数)を改善するために加える添加剤です。

摩擦調整剤(FM剤)

ベースオイルの摩擦を低減するために使用される添加剤です

言葉の意味は同じですが「FM剤」は、省燃費タイプの自動車用エンジンオイルや駆動系の潤滑油として一般的に表記されています。

流動点降下剤

潤滑油の流動点と低温粘度を下げる添加剤です

適用温度の範囲を広げることで、始動性(動き出し)を滑らかにする役割を担っています。

消泡剤

ベースオイルの泡立ちを抑えるために添加されます

食品や下水処理など、日常の中にも広く使われている添加物の1つです。

清浄分散剤

オイルの酸化や劣化で生成するスラッジが金属表面に溜まらないに、表面の清浄性を保つことと、性能を安定させる添加剤の総称です。

防錆剤

防錆剤は名前のとおり、金属材料の表面に発生する錆(サビ)を防ぐための添加剤です。

まとめ

本記事では、ベースオイルのグループⅠ~Ⅴについてやその特徴、製造工程などを解説しました。

ベースオイルはエンジンオイル全体の80〜90%を占めるため、ベースオイルの性能がエンジンオイルの性能に大きく影響します。

ぜひ本記事を参考に、ベースオイルの知識を深め、エンジンオイル選択の参考にしてください。

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